mother

守るべきもの

香水④

それから

会話していても

夫がどこか上の空のようで

二人の間の会話が少しだけ減った

気がした。

 

初めは単純に

夫は疲れているのだと思った。

 

それには理由があった。

 

半年前

45歳で夫は義父のあとを継ぎ

社員5人の小さな設計事務所

所長となった。

 

夫は昔から人付き合いが苦手で

取り立てて飲みに行くような

友達もいない。

 

結婚してからずっと

夫は事務所と家を

往復するだけの生活で

遊びと言えば

義父と下請け会社と行く

週末の接待ゴルフだけ。

 

それもいつも

決まった下請けの

決まったメンバーとしか行かない。

 

けして無愛想ではないけれど

あまり人の印象に残るような

人ではなかった。

 

 

 

そんな夫が所長になった途端

その生活は一変した。

 

一気に人と接する機会が増え

一日図面を引いていた頃とは

全く違う生活を送ることになった。

 

そのことが

想像以上に夫の負担に

なっているのではないかと

私は心配をしていた。

 

人付き合いを

ほとんどしてこなかった夫が

ストレスで鬱にでもなりはしないかと。

 

 

 

「お前は良いな。

昔から人付き合い得意だもんな。

俺がお前なら良かった」

 

ある日夫が私にぽつりと言った。

 

こんな時こそ私が夫を支えよう。

今がその時。

 

私は心の中でそう決めた。

そんな矢先だった。

 

 

しかし私の思いをよそに

夫の変化は止まるどころか

加速の一途を辿っていくのだ。

 

 

 

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