mother

守るべきもの

香水③

そんな我が家に

小さな変化が訪れたのは

半年ほど前。

 

それは初めはともすれば

見落としてしまいそうな

とても小さなものだった。

 

 

 

「ねえ、健太郎さん

ちゃんと聞いてる?」

 

私は

ダイニングテーブルに向かい合い

夕食を食べる夫の顔を覗き込む。

 

「ん?え?なんだっけ」

 

「今ずっと説明してたでしょ。

悠真の進路の三者面談。

来週の月曜日の4時から。

いつも学校に行くの私ばかりだから

たまには健太郎さんに行って欲しいの。

裕真の大学進学の大事な話だから」

 

「ん?ああ、わかった、わかった。

時間空けておくよ」

 

「お願いね。忘れないでね」

 

「大丈夫だってば」

 

「ほんとかなぁ」

 

悠真は高校に入学するとき

義父と夫と同じ建築士になるべく

四大の建築学部を目指すことを決め

コースを選択した。

 

それは長年の

義父母とそして夫の強い希望でもあった。

 

義父母と夫は

将来悠真が義父の設計事務所

入り後を継いでくれることを

強く望んでいた。

 

そして設計事務所

大きく出来ればと考えていたのだ。

 

「いいか、悠真は

将来建築士になって

おじいちゃんの設計事務所

継ぐんだぞ!」

 

義父と夫は悠真に小さいときから

そう言い聞かせていた。

 

私はこっそりと

建築士がいやなら

他の道に進んでも

なにも問題はないのだと

悠真に説明をしたが

 

「おじいちゃんとお父さんが

選んだ道を僕も進みたい。

お母さんあまり心配しないで」

 

悠真は私にそう言った。

 

 

 

夫はそんな悠真の夢を

一番喜んで心から応援していた。

 

なのに……。

 

悠真の大学進学の話に

いつもは誰よりも熱心夫が

その日はまるで心ここにあらずで。

 

珍しいな。

どうしたんだろう。

 

それが

私が夫に違和感を感じた最初だった。

 

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